遺言書の書き方を解説します。今すぐできる遺言書。

 子どもから、遺言書を書いたほうがいいといわれた、知人が遺言書を書いたと聞いたので、自分も書こうと思う、でもどうすればいいのかわからない、とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 いつ何があるかわからないこともあり、書こうと思われたなら、早めに書かれることをお勧めしています。

 そこで、以下では、遺言書の種類をご説明したうえで、自分で自宅ですぐにできる遺言書の作成方法をご説明します。

遺言書の種類

自筆証書遺言

 自分で直筆で作成する遺言書です。多くの方が遺言書と聞いたときに想像する形式です。

 遺言書に関する法律の改正で、作成しやすく、安全に保管できるようになりますので、今お勧めの作成方法です。

 以下でご説明する作成方法は、自筆証書遺言になります。

公正証書遺言

 公証役場で、公証人の面前で作成する遺言書です。

 公証役場できちんとした形式や文章にし、公証人が意思を確認したうえで作成し、原本を公証役場で預かってもらえることから、後に紛争になりづらい遺言書といえます。

 作成費用として、公証役場の手数料がかかります。

その他

 秘密証書遺言、危急時遺言などがあります。

自筆証書遺言について

自筆証書遺言とは

 先ほどもご説明したように、自筆証書遺言は、ご自身が直筆で作成する遺言書になります。

 きちんと形式を守った有効なものを作成すれば、その遺言としての効力は公正証書遺言と同じです。

公正証書遺言と比較した、自筆証書遺言のメリット

すぐに作成できる。

 公正証書遺言を作成する場合、公証役場で予約を取り、必要書類を整え文案を調整し、証人を2人準備して公証役場で作成する必要があり、作成しようと考えてから実際に作成できるまで、1か月程度かかります。

 自筆証書遺言であれば、作成しようと思った当日に、作成を完了することが可能です。

費用が掛からない

 公正証書遺言を作成する場合、公証役場の手数料がかかります。内容によりますが、おおむね数万円~かかることになります。

 遺言書を作成する際に弁護士へご相談すると、弁護士費用が掛かりますが、公証役場で作成する場合は、さらに公証役場の手数料がかかることになります。

 自筆証書遺言であれば、ご自身だけで作成する場合は0円(紙とペンとハンコ)だけでできますし、弁護士へご相談しても、弁護士費用しか駆らずリーズナブルに作成ができます。

作り直しが簡単

 遺言書は、公正証書遺言であっても、自筆証書遺言であっても、新しいもの(最後に作成されたもの)が優先となり、いつでも作り直しが可能です。

 とはいえ、公正証書遺言で費用をかけて作成したのに、これを作成しなおすのは、抵抗があるかもしれません。

 自筆証書遺言であれば、ご自宅ですぐ作成できますので、作成しなおしも簡単にできます。

自筆証書遺言をお勧めしている方

 私のところにご相談にいらっしゃるお客様から、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらがいいか、という質問をいただきます。

 そこで、私が自筆証書遺言をお勧めするケースをご紹介します。

年齢が若い方

 若い方の場合には、遺言書を作成したいというご相談をいただいた際には、自筆証書遺言をお勧めしています。

 将来的に財産や家族関係が変わった際に、作成しなおすことを考えると、自筆証書遺言の方がおすすめです。

将来、不動産を売却・購入する予定のある方

 遺言書を作成する際、不動産をお持ちの方は、不動産をだれに譲るかを遺言書に記載します。

 遺言書に記載した不動産がなくなると、その部分は効力がなくなりますので、遺言書を作成した際の状況と変わってしまうので、新たに遺言書を書き直すことを検討する必要があります。

 また、不動産を購入した場合、その不動産は遺言書に記載されていないため、この不動産を含めて新しく遺言書を作成することが必要になる場合があります。

 このようなケースでは、作成が容易な自筆証書遺言をお勧めしています。

自分で、今から自筆で遺言書を作成しようとしている方向けの、たった1つの注意点

 この記事を読まれて、ご自身で遺言書を作成しようとされている方へのたった一つの注意点は、

形式を守る

ことです。

 自筆証書遺言の場合、

  • 全文を自筆で作成する。
  • 自筆で署名する。
  • 押印(認め印で可)する。
  • 日付を入れる。

 ということが、法律に定められています。(財産目録に関しては例外あり)

 また、法律上の要件として明記されてはいませんが、作成したものが遺言書であることが判るように、表題に「遺言書」としておくことが望ましいといえます。

遺言書の内容をどうするか。

 作成される遺言書のパターンは、以下のどれかが多いといえます。

  • 1人(又は少人数)に、すべての財産を相続させる遺言
  • 個々の財産を誰に相続させるか、細かく記載した遺言
  • 特定の財産だけについて、誰に相続させるか記載した遺言

 なお、遺言書で認知をすることなどもできますが、この記事では取り扱いません。

1人にすべての財産を相続させる遺言

 このパターンの遺言書が作成される典型的なケースは、遺言をする方にお子様や配偶者がおらず、兄弟姉妹や甥姪が相続人となるケースで、お世話になっている甥姪に財産を渡したいというケースです。

 この場合には、甥姪にすべての財産を譲る旨の遺言書を作成することで対応ができます。

 その他、お子様が複数いて、一人に財産をすべて渡したいケースなどで活用されます。

 いずれの場合でも、遺産を受け取れない他の相続人との間で紛争が生じる恐れがありますので、事前にご相談しておいた方がよいといえます。

個々の財産を誰に相続させるか、細かく記載した遺言

 不動産を含む財産があり、それぞれを考えてお子様や配偶者に渡したい場合に活用される遺言書で、弁護士へご相談して作成される多くの遺言書が、この形式です。

 相続税や、遺留分など、様々なことを考慮して決めないと、遺言書を巡りトラブルになってしまうこともあるため、事前に弁護士などへご相談されて作成された方がいい遺言書です。

特定の財産だけについて、誰に相続させるか記載した遺言

 場合によっては、特定の財産(自宅不動産や自社株)のみについて、誰に相続させるかを記載した遺言書が作成されることがあります。

 きちんと作成されるのであれば、その他の財産についても誰に相続させるか決めたほうがいいといえます。

 ただし、自社株の帰属だけはっきりさせておきたい、家だけは配偶者に渡したいが、その他の財産については決めかねている、というケースで、一時的にこのパターンの遺言書の作成をご提案させていただくこともあります。

 のちに、きちんと作り直した方がいい遺言書です。

自筆証書遺言の財産目録に関する特則

 法律の改正により、財産目録については、自筆で作成しなくてもよいことになりました。

 ただし、細かな要件がありますので、ご自身で判断して作成することはせず、弁護士などにご相談することを強くお勧めします。

自筆証書遺言の保管制度について

 自筆証書遺言のデメリットとして、紛失、滅失の恐れが指摘されていました。

 ご自身で作成する遺言書のため、ご自身やご家族が保管することになるため、なくしてしまった、火事などで燃えてしまった、亡くなった後に相続人の方が見つけられず、分からないままになってしまった、相続人に預けておいたけれど、引っ越しの際に紛失してしまった、などが生じえます。

 この点に関し、法律の改正により、法務局で自筆証書遺言書を保管する新しいサービスが実施される予定です(2020年7月10日より)。

 法務局で保管してもらえることから、自筆証書遺言はさらに便利な遺言書になるといえます。

遺言書の文例

 一番シンプルな遺言書は、以下のとおりです。敢えて短くまとめています。

遺言書

 私は、私が有する財産すべてを、長男○○に相続させる。

 令和●年●月●日

 甲野 太郎 印

 これを、1枚の用紙(コピー用紙で結構です)に自筆で記載し、印のところに認め印を押印すれば、一応有効な遺言書が完成します。

 一応と留保をつけたのは、遺言執行者の指定や財産の記載、子の特定など、気を付けなければいけないことがたくさんあるからです。

遺言書作成のご相談ならあいなかま法律事務所へ。

 自筆の遺言書は、ご自身で作成することも可能です。

 しかし、せっかく作っても、ご自身がなくなったのち、万一無効となってしまった場合、その時に改めて作り直すことができません。

 せっかく作った遺言書を無効にしないためにも、遺言書作成の際には、弁護士などにご相談することをお勧めします。

 あいなかま法律事務所では、遺言書の作成に関して、60分無料法律相談を実施しておりますので、作成をお考えの方はご相談ください。