自筆証書遺言と公正証書遺言 どちらで作成した方がよいか。

 遺言書を作成しようとお考えの方が悩むことの一つに、自筆で作成する方がいいのか、公正証書遺言にした方がいいのかということがあるのではないでしょうか。

 ご相談にいらっしゃる方も、どちらにしようか迷われている方が多くいらっしゃいます。

 どちらがいいとは一概に言えない面がありますが、以下では、遺言書を巡るトラブル事例を踏まえて、私がご相談にいらっしゃった方にアドバイスをする際の、ポイントをまとめつつ、それぞれの遺言のメリット・デメリットを見ていきたいと思います。

遺言書を巡るトラブルの例

 先日、ニュースで報道されたケースで、ご存じの方もいらっしゃると思います。

成年後見巡る支援法人の遺産受領 地裁が無効判決

 これは、公正証書遺言ののち、自筆証書遺言が作成されて、裁判にまでなったケースです。

 事案が不明であり、報道ベースで理解するには難しい部分(成年被後見人が遺言書を作成するには、医師2人の立ち合いが必要。民法973条1項)があるのですが、いずれにしても、遺言書を作成したがゆえに、トラブルになってしまった事例です。

遺言をする方の体調・生活状況

 遺言をする方が、高齢であり、要介護認定を受けている、などの場合、遺言をした際の意思能力が争われることはしばしばあります。

 先ほどのニュースの件も、最後に作成された自筆証書遺言の作成時の判断能力が争点となっていたようです。

 公正証書遺言を作成すれば判断能力が争われない、というわけではありませんが、公証人の面前で、公証人と話をしながら作成していることから、判断能力が争われにくくなることは間違いありません。

 そのため、高齢の方、特に要介護認定を受けている方のケースでは、公正証書遺言を作成するようお勧めしています。

環境の変化の見込みがある

 先ほどのニュースの件でもありますが、遺言書は何度でも作成しなおすことができ、後に作成した方が有効(正確には、後に作成した遺言書と抵触する限度で前に作成した遺言書は効力を失う)となります。

 とはいえ、公証役場で費用をかけて、公正証書遺言を作成すると、後に状況が変化しても、作成しなおすのはやや抵抗があるのが人の心理です。

 そのため、遺言書を作成したい理由や、ご相談者の方の環境をお伺いした上で、状況が変わる可能性のある方には、自筆証書遺言を作成することをお勧めしています。

すぐに作成したい、費用をかけずに作成したい

 すぐに作成したい、費用をかけずに作成したいという方の場合には、自筆証書遺言をお勧めしています。

財産が多く、遺言書の内容が複雑

 現在は、財産の目録はパソコンで打って作成してもよいこととなっていますが、以前は財産を含め、すべて手書きをする必要があり、作成に非常に労力がかかり、書き損じのリスクもありました。

 そのため、遺言書の内容が非常に長くなることが見込まれる場合には、公正証書遺言をお勧めしておりました。

 現在は、法律改正により、作成の大変さはやや緩和されましたが、それでも、財産が多い場合などは、公正証書遺言をお勧めしています。

預かる方がいるかどうか。

 自筆証書遺言を作成した場合、どこかで保管する必要があります(法改正により、公証役場で預かってもらえるようになります)。

 銀行の貸金庫を契約していたり、自宅に金庫がある方はそこで保管すればいいですが、そうでなく、他に預かってもらえる方もいない場合には、公正証書遺言を作成し、公証役場で保管する方がよいケースもあります。

 なお、法律改正により、自筆証書遺言であっても公証役場で保管してもらえることとなるため、今後は、この点は考慮しなくてもよいこととなります。

まとめ

 遺言書を作成するにあたって、自筆にするか公正証書にするかは非常に重要な問題です。

 ご自身がどちらの遺言書を作成した方がいいのか、考えがまとまらない方は、一度、あいなかま法律事務所の無料法律相談でご相談ください。