特別寄与料の制度。遺産分割調停への影響

 改正された相続法では、相続人以外の方が介護等を行っていた場合に、特別寄与料を請求できることとなりました。

 新しい制度であり、これまでの運用と変わってくるところもあると思われるので、今回はこの制度についてご説明します。

特別寄与料とは

 特別寄与料とは、相続人以外の親族が、亡くなった方に対して無償で介護などをして、その結果亡くなった方の財産が維持されたり増加した場合に、相続人に対して金銭を請求できる制度です。

 ポイントは、①相続人以外の親族、②療養看護その他の労務の提供、③財産の維持又は増加について特別の寄与、です。

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

民法1050条

ポイント① 相続人以外の親族

 これまでの制度では、上記と同様のものが、「寄与分」として、相続人のみに認められていました。

 以下に、寄与分の条文を引用します(特別寄与料と同様な表現が用いられているところをマーカーで指摘します)。

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

民法904条の2

 特別寄与料は、寄与分で認められていなかった相続人以外の方の「特別の寄与」を、相続人以外の親族にも認めたものといえます。

ポイント② 療養看護その他労務の提供

 従前の寄与分では、寄与分が認められるパターンとして、「療養看護型」、「家事従事型」などと呼ばれる類型があります。

 特に近年問題となるケースは、亡くなられた方の介護を行っていた、療養看護型の寄与分です。

 そして、今回新設された特別寄与料では、この療養看護型について特別寄与料が請求できることとされました。

 逆に言えば、家事従事型(家業を手伝う。)の場合には、請求はできないこととなります。

ポイント③ 財産の維持又は増加について特別の寄与

 特別寄与料の請求にあたっては、財産の維持または増加について特別の寄与が必要です。

 大まかにいうと、単に看護していただけではだめで、監護した結果財産が維持された、介護サービスを利用しなくてよくなった、というような事情が必要ということです。

税金について

 特別寄与料は、遺贈として取り扱われることから、相続税の課税対象となります。そのため、相続税の支払いが必要なケースがあります。

期間制限

 特別寄与料の請求は、相続の開始及び相続人を知った日から6ヶ月または又は相続開始の時から1年を経過以内にする必要があります。

 遺産分割協議の流れでいえば、49日が終わって遺産の整理をはじめると、財産がある程度ある方の場合には、亡くなってから6か月で、ようやく遺産の整理が整い、遺産分割の話し合いが始まるころと思われます。

 短期間の期間制限は、相続に関する紛争を長期化させないという立法趣旨があるようですが、話し合いがまとまらない場合には、速やかに特別寄与料に関する処分調停の申し立てをしなければいけないことになります。

 そのため、この短期間の期間制限は、むしろ、(本来、もう少し話し合いを続ければまとまるかもしれないケースで)特別寄与料に関する処分調停の申し立てを誘発する結果となりえます。 

遺産分割調停への影響

 特別寄与料は、遺産分割調停とは別途の特別寄与料に関する処分調停で定めることとなります。

 寄与分も別途調停が必要ですが、こちらは遺産分割調停と並行して行うことが可能です。そして、これまでは、相続人の配偶者が、被相続人の介護をしていたケースでは、相続人の寄与分として考慮されることが通常であり、この点から、遺産分割調停で一体で解決することが可能でした。

 これに対して、特別寄与料に関する処分調停は、当事者が異なるため、事実上も並行して行うことはできず、手続きが錯綜する可能性があると思われます。

 遺産分割に関する手続きは、非常に複雑であるため、もう少し整理された制度が望まれます。

まとめ

 特別寄与料は、新しくできた制度ですが、寄与分の制度を前提としていることから、ある程度運用に関する指針は見えると思われます。

 特別寄与料についてお悩みの方は、一度あいなかま法律事務所までご相談ください。

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