遺言書を作成するときに注意した方がいい遺留分をご説明します。
遺言書で、子どもたちのうち一人だけに財産を渡したい、他の子どもたちには渡したくない、というお考えの方が、一番注意しなければいけないことが、遺留分です。
そこで、遺言書と遺留分について説明します。
遺留分を注意すべき場合
子どもたちなど相続人のうち、一部の相続人だけに財産を渡したい、一部の相続人には財産を渡したくない、というケース。
財産のうち、不動産やご自身が経営している会社の株など、分けづらい財産が大半を占めるケース。
遺留分とは
例えば、以下のようなケースを考えます。
妻に先立たれ、自分がなくなったら3人の子どもが相続人となるケース。長男は、自分と同居してくれて、身の回りのことをよくしてくれるけれども、他の子どもたちは、年末年始にも会いに来ない。自分の遺産は自宅と多少の預貯金だけれども、よくしてくれている長男にすべて渡したいと思い、遺言書を作成した。
上記のケースでは、子どもが3人いますが、遺言書で遺産は長男だけがすべて受け取ることになっています。
この場合、他の2人の子どもたちは、遺言書上は遺産を受け取れませんが、それでも2人の子どもたちが受け取る権利があるものが、遺留分です。
上記のように、遺言書で受け取れないことになっている相続人であっても残されている遺産に対する権利を、遺留分といいます。
遺留分の割合
遺留分の割合は、以下のとおりです。
相続人 | 遺留分の割合 |
配偶者のみ | 2分の1 |
子どものみ | 2分の1 |
配偶者と子ども | 2分の1 |
配偶者と直系尊属(父母や祖父母) | 2分の1 |
直系尊属(父母や祖父母)のみ | 3分の1 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者のみ2分の1 |
兄弟姉妹のみ | なし |
この割合が遺留分として留保され、相続人は、ここから各自それぞれの相続分に応じて取得することになります。
結果的に、先ほどの3人の子どものケースでは、子ども一人当たり、2分の1×3分の1=6分の1が、遺留分として請求できる割合になります。
遺言書を作成すると、遺留分が発生する可能性があります。
遺留分が発生するケースで、一番多いのが、相続で遺言書が出てきたケースです。
遺産を全く渡さないケースのほか、遺産を一部しか渡さない場合でも、渡す遺産が遺留分より少ない場合に、遺留分が発生します。
遺留分が発生し、これが請求された場合、以下のようなことが生じる場合があります。
遺留分を巡って調停・裁判になる可能性がある。
遺留分について争いになり、話し合いがまとまらない場合、遺留分を巡り、相続人の間で調停や裁判をしなければいけない可能性があります。
弁護士を立てる費用や、話し合いの労力など、非常に大きな負担となりますので、あらかじめ遺留分に配慮した遺言書を作成することは非常に大切です。
遺留分の請求がされると、遺言の執行が中断されることがある(これまでの運用)。
遺言書を作成する際、遺言執行者を定めて遺言の実現を専門家にゆだねることがあります。
しかし、従前の遺留分減殺請求では、遺留分の請求がされた場合、遺言の執行は中断されていました(遺留分侵害額請求により運用が変わる可能性が高いといえます)。
そのため、遺言書をスムーズに執行するためには、遺留分に配慮した遺言書としておくことが大切です。
遺言書作成の際に、遺留分に配慮する方法。
それでは、以下で、遺留分に配慮した遺言書の作成方法をご説明します。
1 遺産総額を考える。
相続が生じたとき、遺産総額がいくらくらいになるのかを考えます。不動産であれば大まかな評価額を、自社の株式であれば決算書から純資産価額を確認します。
また、預貯金や株式については、将来使って減ることや、株価の変動で価値が変わることを考慮することも必要です。
2 それぞれの相続人の遺留分額を考える。
遺産総額を把握したら、それぞれの相続人で遺留分がどの程度生じるのかを考えます。
3 遺留分への対応法を考える。
遺留分への対応としては、以下の2つのパターンが考えられます。
遺留分に相当する遺産を遺言で渡しておく
遺留分に相当する遺産を遺言で渡しておくパターンです。この場合、そもそも遺留分は発生しません。
遺留分を請求されたときに支払える準備をしておく
これは、遺留分を侵害する遺言を作成しつつ、遺留分が請求された場合に金銭を支払えるように、あらかじめ準備しておくパターンです。
また、上記のミックスとして、遺留分には満たないけれども、相当額の遺産を渡しておく、ということも考えられます。
4 遺言書を作成する。
上記を考えた上で、遺言書を作成します。
遺言書作成の場合には、遺留分を考えておくことのほか、相続人の一人が先に亡くなってしまった場合、遺言書で指定した遺産を売却した場合など、様々な場合を考慮しておくことが大切です。
遺言書を作成する場合、遺留分を考えて作成しましょう。
遺言書を作成する場合、後のことを考えて、遺留分を考慮することが欠かせません。
費用や手間を惜しみ、遺留分に考慮しない遺言書を作成してしまうと、後に遺留分を請求された場合に、弁護士を依頼せざるを得ず、多額の費用が掛かってしまうこともあります。
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