生前の相続対策・相続税対策で考えるべき3つのことがら
生前に相続対策をされようと考えている方へ、考えるにあたって考慮した方がいい3つのことがらをご説明します。
遺産分割のご相談を受けていくと、亡くなられる前に相続対策をされたと思われるケースをよく見かけます。
遺言書の作成や、不動産業者や金融機関、コンサルタントや各種士業とご相談されたと思われるケースも頻繁にみられます。
そこで、以下では、私が関わった事例を踏まえて、生前の相続対策で考えるべきことをご説明します。
相続税対策と、もめない相続のバランスを考える。
生前の相続対策を考えられる方の多くは、相続税が心配だ、相続税を節税したいのではないかと思います。
実際、遺言書を作成するにあたっても、相続税について心配されている方も多くいらっしゃいますし、取り扱ったケースで、相続税対策を積極的にとったことが伺われるケースも多くあります。
近年の相続税対策の主流は、現預金の財産で不動産を購入する、アパート経営を開始して借り入れを増やし、評価額を下げる、などのようです。
その結果として、預貯金であれば簡単に分けられたのに、アパートになってしまって分けることが難しくなった、アパートを取得する方とその他の方で不均衡が生じた、など、もめるケースを多く見かけます。
相続税が安くなる(見込み)だから、相続人全員にメリットがあると考えず、きちんとご説明し、納得してからした方がいいですし、分け方にも工夫が必要です。
相続税の節税効果は、あくまでも見込みであること
先日、アパート投資で相続税の節税をしたと思われるケースで、国税庁が財産評価基本通達ではなく鑑定評価を行い、結果として節税を否定したとのニュースがありました。
上記のように、節税効果があるとされているのは、あくまでも見込みであることに留意すべきです。
特に、相続税は、相続発生時にかかることから、税制が改正されて、期待した節税効果が発生しないなど、大きなリスクを伴うことに留意すべきといえます。
相続対策を行って、財産を目減りさせては元も子もない
相続税対策の基本は、相続時にある財産の評価額を減らすこと、になります。その他、各種特例措置や非課税枠もありますが、以下では財産の評価額を減らすことに焦点をあてます。
財産の評価額を減らすうえで一番確実なのは、ご自身が使うことです。例えば、将来のことを考えて、自宅のリフォームを行っておくなど、いずれしなければならないことなので無駄にならず、財産を減らすことができます。
アパート経営や不動産の購入などは、財産の評価額を、減額させることで節税効果を生じさせるものになります。
相続税の際に財産の評価をするルールを定めた「財産評価基本通達」の規定を活用して、全体としての財産の価値を減らさずに、評価額を下げることが理想です。
逆に言えば、節税を目的としてアパート経営など不動産の購入を伴う相続対策をして、結果として財産が減少することのないよう注意した方がいいといえます。
同じように不動産を購入するにしても、アパート経営など、必ずしも必要でないことをするのではなく、子どもが家を建てることになったので、土地を自分の名義で購入した、いずれは子どもに相続させるように遺言書も作成した、結果的に節税にもなった、という形が理想です。
相続税対策に潜むリスクと、アドバイスを受けるべき人
特に、相続税対策は、うまく対策ができれば多くの相続税が節税できる可能性があることから、過剰にこれを勧められる、といったケースも目にします。
ですが、
- のちに相続人でもめない相続
- 法律改正のリスクなど、節税ができない可能性があること
- 財産を減らさない(アパート経営のリスク、アパートとしての価値)
など、考えるべき点は多くあります。
最低限、これらのことをきちんと説明してくれて、考慮してもらえる方にご相談した方がいいといえます。